創立75周年を迎えて
Greeting企業組合針谷建築事務所は創設から今年で76年を迎えました。昭和21年に数人の労働者が集まって前身の「静岡建設勤労自治体」を発足させて以来、針谷建築事務所は三四半世紀を経て生き続け、設計を通して戦後復興と社会資本の充実に取り組んで参りました。
経済の営みと繁栄で都市はその領域を拡張する中にあって、しかし現在の都市的状況は、空き家の増加、建築の老朽化、コンバージョン、商店街の変質等を余儀なくされ、これまで作り上げた都市の基盤や骨格の細部の変更や修正なしではまちを支えきれない時代を迎えていると思います。
2007年にピーク(1.3億人)に達した日本の人口は、2030年には1.1億人に減少し、高齢化率は30%を超えるでしょう。それまで人口の増加に合わせて促進してきた経済も、整備を重ねてきた都市の機能や交通網も、成長を前提とした都市的ニーズだけでは解決できない社会を我々は目の当たりにしています。
このようなまち(社会)の変化を見るにつけ、針谷建築事務所は今後の都市の展開に新たな傾向を感じています。そこでの設計事務所の役割とは、建築の更新と増強だけでなく、既存のハードに対する課題の解決と克服にあるのではないか、という事です。
都市の変質とでも言うべきこの問いに、我々はどう応えていくべきか・・・素朴な疑問から出発した提案を、ここにご覧いただければ幸いでございます。戦後復興にルーツを持ち、都市の再編に向けて新たな意思を持つ企業組合針谷建築事務所は、見えにくくなった郷土の伝統を失わずに、次なる時代へとその歩みを進めて参りたいと思います。
今後ともよろしくお願い致します。
鳥居 久保